【台風は色々を狂わせた】【66話】
こんばんは、じゅん(@mocchi農家さんの語り部)です。
今日は台風、しばくぞっていう内容です。
台風は人を壊した
神戸には先週、台風が来ました。
都心部ではさほど大きな影響もなく、すでに忘れ去られていますね。
でも、この台風で人生が大きく崩れた人が。
神戸市西区の農家さんたちです。
本当に病んでしまい、死を選んでしまうんじゃないかと心配になるくらいの落ち込みです。
出てくる言葉はネガティブなものばかり。
農業やめよう、どうせ売れへん、辞めようかな。
いつもは屈託のない笑顔で、冗談ばっかり話す、気のいいおっちゃん達です。
そのおっちゃん達が豹変するんです。
これ、脚色なしです。
現実です。
かける言葉が見つからないです。
どんな言葉の引き出しを開けても、この状況に合う言葉なんて見つかりません。
どんな表情でいたらいいかもわからないので、ひたすら地面を見てました。
市場の売れ行きを予測して、
この時期にきゅうりを出せれば収益上がるぞ!って戦略立てて。
そんなにお金も投資できるわけではないから、
業者に頼めば何十万、下手したら何百万かかるビニールハウスの工事を自分で行なって。
台風
酷暑
豪雨
台風
・・・・。
もはや災害レベル。疑いようがない。
そんな中でやっとのこと、出せるようになったきゅうり、なし、なす、イチジクなど。
一瞬で吹き飛びました。
何千万もの赤字になった農家さんもいます。
苦労して作ったビニールハウスが全部ぺしゃんこになりました。
これが現実。
畑に行かないとわからない現実。
これ見ないであーだ、こーだ言うなよ。
絶対にあかんぞ。
台風は僕を狂わせた
そんな中、 一番仲がいい農家さん、山崎高志さんの畑で片付けをして、押部谷の高橋さんの畑にもお手伝いに行ってきました。
お手伝い自体はサクサクと進んで、それはよかったんです。
農家さんの話し相手にもなれて、少しは心を軽くできたかなとも思うんです。
ただ、それでも、僕の心の中は渦巻いてました。
鳴門の渦潮なんて目じゃないぜ。
僕も今、高橋さんからきゅうりはじめ、プッチーニかぼちゃも扱わせてもらって、お客様に現場の匂いと物語をお野菜と一緒に届けています。
でも、届けられている人が少ない。
20人ほど。
SNSのいいね、シェア、リツイート、コメント。。。
それらの数が僕に対して
まだまだ価値出せてないな、甘いな
と暴力的に言い放ってくる感覚。
1年八百屋やってきたのに、しょぼいな俺。
とすごく悔しい思いにも駆られます。
焦ります。心がざわざわ震えます。
「1年神戸でやってきたのに、こういう時にこそ農家さんと食べる人たちの繋がりを作っていくべきなのに、広がりまだまだ作れていないやん、俺。」
まだ何者でもない、武器がない自分に焦りと怒りと複雑な感情を抱いて、心が忙しなくなります。
農家さんも僕も、狂わされた。でも狂った奴が変えるんやで
今回の台風、押部谷・玉津あたりの被害がひどく、僕が大好きな農家さんたちの落胆する姿、疲れ切って膝に手をつく姿、たくさん見てきました、畑で。
「6月から作ってきて、やっと美味しく出せると思ったらこれや。」
「もう好きなだけ持っていき。」
その言葉にどれだけの感情が込められていたのか。
諦め、悲しさ、怒り。
行き場がなくなって、つい口をついた言葉、滲み出る雰囲気。
なんて声をかけたらいいか、本当にわかりませんでした。
僕らは生きるために食べていて、その食べ物を作っているのが農家さん。
僕らの食べ物を作ってくれている農家さんに、災害によるリスクをはじめとして、いろんなリスクのしわ寄せが一方的にきている。
なのに、それなのに。
たいした痛みも伴わずに僕らはどこかのお野菜を食べて生きている。
これっておかしいと思うんです。
フェアじゃない。
ここを変えにいくぞ、絶対に。
そう思えました。
まだ何者でもなくて、寝られへんくらい悔しくて、焦るけど。
”農家さんと食べ手の距離を0にする”
僕らが目指しているもの、絶対に形にする。
絶対に実現させてやる。
山崎さん、けんじさん、高橋さんと何十分も話して、やりたいことに確信が持てました。
距離を0にするため、背中を支え合う農食の関係を作るために、今は複数の農家さんにご協力いただきながら、自分たちでプログラミング勉強してwebサービスを開発してます。
農業の現場にあったらいいなのサービスです。
僕らmocchiの動きはさながら亀みたいで、ゆっくり遅く、地を這うようなものですが。
すごくコンプレックスを抱えながらでも、それをパワーに変えて、もっと農業を勉強して、野菜を勉強して、自然を勉強して。
もっと農家さんに、畑に触れて。
愚直を体現するくらいに、じっくり芯を食って、動いて生きます。